理事長あいさつ

公益財団法人
あきた移植医療協会 
理事長 羽渕 友則(秋田大学医学系研究科長、医学部長、腎泌尿器科学講座教授)

社長

 日本の臓器移植の現況について、かいつまんでお話致します。                                  2019年末から私共を大いに悩まし、災禍をもたらした新型コロナウイルス 感染症の影響は、移植医療にも大きな影響を及ぼしました。臓器移植件数については、2019年まで順調に症例数を伸ばしていましたが、コロナ禍の影響で2020、2021年は大きく減少。しかしながら、コロナ禍が落ち着き、そして医療界も落ち着きを取り戻した2022年には、急激な回復を遂げました。
 臓器の提供件数については、脳死、心停止後の臓器提供についても同様の傾向で、2019年には過去最高を記録しましたが、2020、2021年は大きな落ち込みとなり、その反動で、2022年にはV字回復。そして、現在の2023年は、過去最高のペースで脳死・心停止後の臓器提供が進んでいます。
 ちなみに秋田大学医学部泌尿器科では、コロナ禍の中でも生体腎移植は変わることなく年間約20例を安全に実施し、さらには脳死・心停止後の腎移植も3件行っています。
 一方で、世界規模から見た日本の移植件数は、非常に少ないことが、以前から指摘されております。100万人当たりの臓器提供件数は、臓器移植の先進国である米国やスペインと比較すると、50倍以上の開きがあります。また、宗教的にはキリスト教の影響が強いとは言え、同じアジア人で伝統的には仏教の国である韓国でも約9倍多い臓器提供となっています。
 日本では脳死下での臓器移植が認められた「臓器移植法」の施行から約25年になりますが、世界でもワーストレベルの臓器提供件数の理由を”単に日本人の宗教観や感情的な違いが・・・”といつまでも言っている場合では無いと感じます。日本における移植件数の少なさには多くの理由が指摘されています。例えば、日本の脳死判定の基準がかなり厳しいことも一因と考えられています。脳死判定の基準を世界標準レベルまで緩和しようとすると、その悪い面ばかりを強調し、大局的な視点から良い面を認めない文化には、個人的には辟易します。厚労省もいろんな対策を講じようとしていますが、それ以上に日本の臓器移植希望者の数は伸びています。
 嘆いているだけでは、状況は改善しません。新型コロナウイルス感染症も5類となり、医療体制も元に戻りつつありますので、当協会としてもこれまで以上に、臓器移植の推進に尽力していきたいと思います。
                                                「あきた移植医療協会協会だよりVol.18 」より抜粋


法人沿革

1995年
 財団法人秋田県臓器移植推進協会設立
2005年
 財団法人秋田県アイバンクと統合、財団法人あきた移植医療協会と名称変更
2013年
 公益財団法人あきた移植医療協会と名称変更
2019年
 アイバンク設立から50年