FIRST 最先端研究開発支援プログラム 原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡の開発とその応用

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原子分解能・ホログラフィ電子顕微鏡について

収差の壁を乗り越えるために

電子顕微鏡で観察に使うのは電子です。電子の波長は可視光線の波長よりずっと短いので、より小さいものを見ることができます。どれだけ小さなものを見分けられるかを「分解能」といいます。電子の波長は、原子の100分の1以下(数ピコメートル)ですから、分解能もその程度まで到達できそうですが、実は、そうなっていません。現在最高の分解能は50pm程度です。

電子顕微鏡には、分解能の向上を阻む壁があったのです。それは、レンズに特有の収差というものです。

レンズの収差とは

収差には主として球面収差と色収差があります。球面収差を見てみましょう。
光学顕微鏡では、ガラスの凸レンズで小さいモノを拡大しますが、電子顕微鏡で凸レンズに当たるのが、電子レンズです。凸レンズは一点から出た光や電子が焦点に集まると考えがちですが、そうとは限りません。レンズは、通常、球体の一部を使いますから、レンズの中心付近を通った光線と中心から離れたところを通った光線では屈折量に違いが出てしまうのです。これが球面収差です。球面収差の結果、レンズを通した像がぼやけます。

  • 光学顕微鏡

  • 電子顕微鏡

電子顕微鏡は収差の補正ができない

光学顕微鏡では凸レンズと凹レンズを組み合わることによって球面収差を補正できます。
しかし、電子レンズを使う電子顕微鏡では、凹レンズにあたるものをつくることができませんでした。そのため、電子顕微鏡は収差補正ができず、電子の波長の短さを活かしきることができなかったのです。

  • 光学顕微鏡の収差補正

宿願の収差補正が実現

収差を補正することは、非常に難しく、電子顕微鏡が発明されて以来の宿願でした。それが、ついに可能になり、1995年に透過電子顕微鏡で収差補正が実現しました。

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