FIRST 最先端研究開発支援プログラム 原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡の開発とその応用

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原子分解能・ホログラフィ電子顕微鏡について

ホログラフィー電子顕微鏡とは

ホログラムの原理

水面に広がる波は誰でも見たことがありますが、2つの波が出会うと干渉が見られます。ホログラムは、この干渉を利用しています。光を2つに分け、一方の光を物体に透過させ(信号光)、他方は透過させない(参照光)で、それらの2つの光を重ねると干渉縞ができます。これを記録したのがホログラムで、物体の三次元情報が記録されています。ホログラムに元の光を当てると、物体が三次元の像として再生されます。綺麗なホログラムをつくるには、光の干渉性が良いこと(波の位相が揃っている)ことが重要です。

電子のホログラム

電子でもホログラムができます。電子も波の性質をもっているからです。つくり方は、基本的に光のホログラムと同じです。綺麗な電子のホログラムをつくるには、同様に、干渉性の良い電子線が不可欠です。電子顕微鏡のなかでホログラムを作成するホログラフィー電子顕微鏡の開発に成功したのが、外村彰博士です。

中心研究者紹介

ホログラフィー電子顕微鏡の仕組み

ホログラフィー電子顕微鏡では、試料に透過させた電子波と、試料のないところを透過させた電子波を干渉させて、電子のホログラムを生じさせます。
ホログラムには、試料の情報(電場、磁場、三次元形状)が記録されています。
このホログラムをフィルムで記録したり、CCDカメラで取り込んで、それをコンピュータで処理して元の像を再生します。

1. 電子は粒子と波の2面性をもちます。電子線ホログラフィーは、電子の波の性質を使います。

2. 電子源から放出された波面のそろった電子波が・・・

3. ・・・試料を透過すると、試料の磁場や電場、三次元形状などにより、波面が変化します。

4. 電子波の半分を試料に透過させます。この電子波を物体波と呼びます。 残りの半分は、試料のないところを透過させ、こちらを参照波と呼びます。

5. 電子線バイプリズムを置き、その中央のフィラメントの片方に物質波を、他方に参照波を通します。フィラメントに正の電位を印加すると、両側を通る電子波は引き寄せられ干渉します。

6. 干渉によって干渉縞が生じます。これが電子のホログラムです。ホログラムには、試料の情報(電場、磁場、三次元形状)が記録されています。このホログラムをフィルムで記録したり、CCDカメラで取り込んで、それをコンピュータで処理して元の像を再生します。

二重スリットの実験

量子力学の世界を現す有名な実験に“ 二重スリットの実験” があります。これは、2つのスリットのある壁を用意して、これに物質を通過させ、その結果をスクリーンで観察する実験です。私たちが肉眼で見る世界、例えば、水の波紋は、2つのスリットに通って2つに分かれた後に干渉して、干渉縞が観測されます。これは、水が波の性質をもっているので理解できます。粒子ではどうでしょう。粒子ではどちらか一方のスリットを通過して、スクリーンには2つのピークが観測されます。
では、ミクロの世界の電子はどうでしょう。二重スリットに向けて電子を1個づつ放つと、スクリーンには電子が粒子として観測されます。ところが、実験を続けてゆくと、多数の粒が干渉縞のように観測されます。これは、波の性質です。つまり、電子は粒子であり波であるという量子力学の不思議な世界が観測されたのです。

  • 「世界でもっとも美しい10の科学実験」ロバート・P・クリス著、青木薫訳、日経BP社、2006年刊

二重スリットの通過の問題

電子で二重スリットの実験を行った場合、電子は二重スリットをどのように通過するのでしょうか。電子が粒子として通過した場合、どちらか一方のスリットしか通れませんから、干渉することはありません。しかし、実験では、電子は干渉したことが観察されたのです。この結果を受け入れるには、電子がスリットを通過するときは、波であったと解釈することです。1つの電子の波が二重スリットを通過して、2つの波になり、それらが干渉したと解釈します。電子は波の状態で干渉したのですが、さらに、スクリーンでは粒子として観測されました。この不思議な現象は、理論的にわかっていましたが、実験で証明するには技術的に困難だと言われてきました。しかし、外村彰博士は、電子顕微鏡を使って実験に成功したのです。この実験は、「世界で最も美しい10の科学実験」の一つとして選ばれ、世界の教科書に載っています。

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