FIRST 最先端研究開発支援プログラム 原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡の開発とその応用

原子分解能・ホログラフィ電子顕微鏡について

電子顕微鏡の仕組み

光学顕微鏡と電子顕微鏡

みなさんが知っている光学顕微鏡は光とレンズでものを拡大するという虫眼鏡の原理を発展させてつくられ、数百倍という、それまでの常識では考えられない世界へと導いてくれました。しかし、光で見える細かさ(分解能)には限界があります。可視光の波長よりも小さなものを見ることができません。

一方、電子顕微鏡は、光よりも波長が短い「電子線」を利用します。調べたいモノに電子線を当て、通り抜けたり、反射したり、飛び出してきたりする電子を検知して画像にします。このとき電子線が明るく、ビームが細ければ細いほど、物質の内部や原子配列まで観察することができるわけです。

  • 光学顕微鏡

  • 電子顕微鏡

分解能

分解能とは、2つの点を2つの点と認識できる最短の距離(正確には点分解能)を指します。
光学顕微鏡の分解能は、観察に用いる可視光(目で見える光)の波長で限界が決まっています。可視光の波長は、400から700nm(ナノメートル)。この値から計算によって分解能は200nmとされています。
一方、電子の波長は、光の波長の10万分の1以下、つまり、 数pm(ピコメートル、0.001nm)です。従って、理論的には、電子顕微鏡の分解能は、数ピコ以下になります。しかし、電子顕微鏡はレンズ収差によって、分解能が制限されます。現在最高の分解能は、49pmです。

電子レンズの原理

光学レンズと電子レンズ

レンズは顕微鏡の中で最も重要な部品です。光学顕微鏡で使うレンズは「光学レンズ」、電子顕微鏡で使うレンズは「電子レンズ」と呼ばれます。光学レンズは、みなさんが知っているようにガラスやプラスチックで出来ています。一方、電子レンズは、銅線を巻いたコイルで出来ています。どちらも、見たいものを拡大するレンズ作用をもつことは同じですが、コイルからどのようにレンズ作用が生まれるのでしょうか。電子レンズの原理を見てみましょう。

1. 凸レンズは平行に入射した光を収束させる作用があります。光学顕微鏡では、この凸レンズの作用を使って像を拡大します。

2. 一方、光に代えて電子で像を拡大する電子顕微鏡は、電子レンズを使います。 電子レンズは、コイルに電流を流して発生させる磁場で電子を収束させます。

3. コイルで発生させる磁場で、どうやって電子を収束させるのでしょう。

4. 説明を分かり易くするために、コイルを広げます。

5. コイルに電流を流すと・・・

6. 磁場が発生します。

7. 磁場の中に、電子を入れます。電子は光軸と平行に入っています。

8. 入った電子は磁場の力を受けます。

9. このとき、磁場の方向は下向きです。電子は、奥に向かっていますが、これを電流に置き換えると手前に向かっていることになります。

10. 磁場をB、電流をIとすると、フレミングの左手の法則によって、電子はFの向きに力を受けます。

11. つまり、電子は光軸のまわりを回りながら・・・

12. ・・・奥に進みます。

13. 電子が回ると、今度は、光軸に平行な磁場から力を受けます。

14. この力は、光軸に向いているため・・・

15. ・・・電子は内側に螺旋回転しながら進みます。

16. 結果として、電子はコイルにより、光軸の方に曲がります。

17. また、磁場の強さは、光軸に近づくほど弱いことから、電子の曲げられる強さも光軸に近いほど小さくなります。

18. その結果、電子は全て一点に収束します。

19. コイルを使った磁場によるレンズ作用です。

20. このようにして、光の代わりに電子でものを拡大することができます。これを電子レンズと呼んでいます。

21. 実際の電子レンズは・・・

22. ドーナツ型のコイルを鉄で囲んだ構造になっています。

23. 電子顕微鏡は、複数の電子レンズが組み合わされています。

24. 電子で観察する電子顕微鏡は、光学顕微鏡では見ることのできない微細な対象を観察できることが利点です。

ページトップ